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解説・労働問題

労働問題に関するニュースなどを適当に解説していきます

「遅刻で罰金1万円」 保育士の“劣悪”職場環境 

何となく「会社が労働者に対して罰金を科すのはまずいだろう」と思われるが、ではなぜまずいのだろうか?今回は会社が労働者に罰金を科すことの問題点を解説する。

まずは以下の記事を。

headlines.yahoo.co.jp

定員を大幅に超える園児を受け入れていた兵庫県姫路市認定こども園が「遅刻で罰金1万円」などとする不当な雇用契約を保育士と交わしていた疑いがあることがわかりました。現場からは「悲鳴」が上がっていました。

 姫路市認定こども園「わんずまざー保育園」では、定員46人を超える22人の園児を市に隠して私的に受け入れていました。70人近い園児を10人でみていた保育士たち。その職場環境も劣悪でした。

 「人手が足りないときに子どもがけがをしてしまって。それは自分たちがつくる環境が悪いと強く言われて、そのときはかなりきつかった」(現役の保育士)

 MBSが入手した保育士との“裏契約書”。「無断欠勤は7日間。当日欠勤は3日間、ボランティア勤務」遅刻や欠勤をすれば罰金や無給で働くなど正規の雇用契約とは異なる内容です。

 「15分前に来てないと遅刻扱いで罰金があるとか」(現役の保育士)
 Q.罰金はいくら?
 「1万円です。(給料から)引かれていた職員もいた」

 姫路市は監査に入った際、こども園の賃金台帳に「欠勤控除」という項目を確認したといいます。保育士の中には、給与から4万3000円も引かれていたケースもあったということです。これに園側は「有給休暇を超えて休んだ場合の措置」だと説明したということですが、控除額が不自然に多いため、市は園側に説明を求めているということです。また、園では保育士が13人働いていることになっていましたが、3人に勤務実態はなく、働く側にとって休む間もないほどだったといいます。

 「会議のときに、ごはんは別の部屋で10分か15分で食べて戻ってくださいと言われた。縮こまってごはんをかきこむことがたくさんあって辛かった」(現役の保育士)
 Q.何人で何人をみていた?
 「国の基準で0歳児なら保育士1人に対して3人とかですが…その人数が満たされてなくて人数オーバー。いつもそういう人数をみている状態だった」

 保育士らは勤務実態などについて、すでに労働基準監督署に相談しているということで、姫路市は不当に人件費を減らすなど労働基準法に違反していた疑いもあるとみて調べています。 

 

問題点を拾うと、

  1. 15分前に出勤していないと罰金として1万円が給料から差し引かれていた。
  2. 欠勤するとボランティア勤務をさせられた。
  3. 食事を10分か15分で食べて戻るように言われた。

こんなところであろうか。労働問題以外にも保育士の配置基準など色々と問題があるようだが、それらは別のブログに譲ることにする。ひとつずつ解説しよう。

1.15分前に出勤していないと罰金として1万円が給料から差し引かれていた。

これは今回の問題全体に関係することだが、労基法16条には「賠償予定の禁止」として「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めている。今回のケースも「損害賠償を予定する契約」に該当する可能性が高い。

もっとも、記事中には「15分前に来ていないと」としか書かれていないが、これが「出勤時間の15分前に」という意味であるとすれば、遅刻すらしていないことになる。もはや何の罰金だか意味不明である。

さらに、「給料から引かれていた」との記述もあるが、これも問題である。一定の例外はあるが、会社が給料を天引きすることは許されていないのである。

労基法24条には「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定められている。24条は賃金支払いの5原則と言われる規定で、賃金は、1.通貨で、2.直接本人に、3.全額を、4.毎月1回以上、5.一定の期日を定めて支払わなければならない。

仮に会社が罰金を支払わせたいのであれば、いったん全額を支給した後に、賠償額を請求するような形でなければならない。

なお、たとえば1時間の遅刻に対して1時間分の給料を差し引くことは差し支えない。ただしこの場合でも、いったん全額を支給した後に労働者に1時間分の給料の返還を求めるか、あらかじめ賃金控除に関する労使協定を締結しておく必要がある。

2.欠勤するとボランティア勤務をさせられた

無断欠勤は7日、当日欠勤は3日のボランティアをさせられるということである。どのような処理がされていたのかは不明であるが、おそらく通常通り勤務させた後、7日分なり3日分なりの賃金を差し引いていたのであろう。

これも問題は上記1.と一緒で、賠償予定の禁止、全額払いの原則に違反する。

なお、上記1.同様に、たとえば1日分の欠勤に対して1日分の給料を差し引くことは問題ない。

3.食事を10分か15分で食べて戻るように言われた。

これも詳細が分からないので何とも言えないが、休憩時間が10分か15分しかないということであれば問題である。

労基法34条には、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分以上、8時間を超える場合には少なくとも60分以上の休憩時間を与えなければならないこととなっている。

4.その他

では、労働者に対して一切罰金の支払いを求めることができないかというとそうではない。就業規則に「減給の制裁」として記載しておけば、制裁として罰金を科すことは可能である。

ただし、この場合でも、その金額は「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」とされており(労基法91条)、会社が任意の金額を制裁できるわけではない。

記事中には「給料から4万3000円も引かれていたケースもある」とある。就業規則に無断欠勤に対する減給規定を定めて罰金を科すとしても、仮に月給が30万円だとすると平均賃金は約1万円。無断欠勤が5回あったとしても、平均賃金の半額=5000円×5回=約2万5000円ということになり、4万3000円の減給というのはあまりにも不自然な数字である。

所感

少し前に「某コンビニで風邪で欠勤したアルバイトに罰金を支払わせた」というニュースも見たが、いずれにせよ店長なり園長なりの恣意的な罰金を科すという行為はあまりにも幼稚でレベルの低い事件だと言わざるを得ない。バカな経営者の言われるがままにはなりたくないものである。